140文字小説

日々Twitterで綴っている、実話も含むときもある創作小説ブログです。

純文学

「月に手を伸ばす」

夜空に在る。月に手を伸ばすんだ。届かない。絶望。丸くて、あんなに輝いて。だから月に手を伸ばすんだ。届かない。切望。伸ばした手が行き場を無くす。でも、僕は月に手を伸ばすんだ。そこに在るのだから。届かない。願望。夢に似てるね。月に手を伸ばすん…

「寂しいて思うのは」

寂しいて思うのは、想う相手があってこそだ。なんて言うけど、違うよ。みんな生きるものは繋がっているんだ。だから寂しいんだよ。だから声をあげるんだ。そして俯き、声のない涙で泣くんだ。でもそれは伝わるから。何故なら、みんな生きているから。

「骸から生まれた火」

骸から生まれた火。どこへ行くんだ?一人で歩き出した。足はあるようだ。ボウボウと燃える足は向かい風に煽られて後ろに尾を伸ばす。その内に手が生えた。大きく両腕を振り歩いて行く。今度は坂道を行くのか?上を見上げている、それは頭のようだ。ひとがた…

「不器用な彼と彼女」

「辛いて言っちゃ駄目!」「辛いて言っていいよ?」これが俺の彼女の口癖。矛盾してるよな!励ましや慰めの言葉は、それこそ沢山あるんだ。けどさ、俺、思うんだ。彼女はきっと、俺を認めている。信頼もしてくれてるかな?だからこその言葉だって。これが、…

「詩を忘れたカナリア」

「ねえ、私の為に歌って。ずっとずっと…」カナリアが言うんだ。羽をばたつかせて。彼女は歌うことを忘れ、代わりに人の言葉を覚えた。「歌って」来る日も来る日も言葉を話す内。最初の話せる嬉しさを忘れ、話す言葉は嫉妬に変わる。僕はカナリアの為に歌うん…

「絶望の経験」

死ねないのなら生きるしかない。「死ねないのなら…」言葉にしようとした俺の口元。続きが出て来ない。挫折を繰り返し経験した。しかし、絶望を経験したのは初めてだった。挫折は私事。乗り越えた。絶望も私事。乗り越えられるか?「辛い」今の俺に口に出来た…

140文字小説「赤い空」

空が赤い。毎日空が赤いんだ。朝も昼も夕方も、そして夜も空が赤いんだ。人は…それを見上げる。狂い出すんだ。何もかもが。見たこともない赤い空が続き、世界中の人がぽつりぽつりと言葉を口にする。人は一端口を開くと止まらない。阿鼻叫喚の果て。絶望が寄…

140文字小説「親父の口癖」

「時代が選ぶ。お前はやりたいようにやれ。なあ、時代は大きいぞ?」こんな事を言われて育った俺。反発すると、『俺も親父の口癖が移ってな』と、照れ笑いをする。そんな俺も三十路を過ぎようとしている。親父の口癖が口を突く。「時代が選ぶ…」声に出し思う…

140文字小説「其れこそが運命」

逃れられない。其れこそが運命。逃げても逃げても追い掛けて来る。其れが悪しき者なのか。其れが善き者なのか。だからこその運命。ふと、立ち止まった時に悟る。気付くんだ。”何か”を。逃げろ逃げろ!否、捕まえろ!運命に翻弄される様。全ては貴方次第。

140文字小説「死ぬまで生きろ」

「死ぬまで生きろ、とことん生きてやれ」「儂を越えろ」「あっははは」「大声で笑って死ねるのは、お前らのお陰だ」そう言って死んだ祖父は98歳の大往生。皆、祖父の大笑いに釣られて笑ったが……。祖父が息を引き取った後は、皆、大声で泣いた。良いんだよな…

140文字小説「四季を殺して」

俺は春を殺した。君の笑みが気味悪く芽吹いた生命は死んだ。夏を殺した。死んだ途端に雪を壮大にぶちまけた。君が舞う姿を見る。秋を殺した。君の瞳に炎が宿り。生きるものは狂い、断末魔命に色を着け。冬を殺した。全て吹き荒ぶ風に持って行かれ俺と君が残…

140文字小説「死の自覚」

人間は何時か死ぬ。何時か死ぬことを自覚出来ない人間は怖い。鏡を見てご覧?そこには何が映って居る?肉体の姿を視て。その奥に潜む神経を視て。更に心を視て。「何が見えた?」自覚が無ければ自分の姿は視えないよ?何時か死ぬことを知らない人間は怖い。

140文字小説「幸福と不幸」

幸福が存在する。不幸が存在する。皆、我も我も。「幸福」「不幸」四苦八苦する。誰かが声を掛ける。労りの言葉も、促す言葉も。その言葉の諸々が掻き消えて行く。必死に掴んだそれ。それは誰の為?「幸福」「不幸」誰のもの?誰の為のもの?心に聴く事は出…

140文字小説「絶縁の詩」

絶縁の詩を詠う。少年が詠う。枯れた心を抱えて。少女が詠う。悲しみに貫かれて。青年が詠う。勇気を手放して。娘が詠う。裏切りに震えて。老婆が打つ手、詩を詠う。この絶縁の全ての心を手に乗せて。女が詠う。断ち切る詩を。依頼主のひとつの縁切りが織り…

140文字小説「一人じゃない」

「何故、人を意識するんだ?」「人は一人じゃないからさ」さり気なく友が言う。「君の作品も人柄も人とは違う。その存在感。君以外の人には有り得ないよ」「ははっ、褒め言葉として貰っておくよ」切なそうに目を細める友の顔。「飲み明かそう!」人は一人じ…

140文字小説「一点の流れから」

一点の流れを見詰めたのなら見えた筈。一点の流れに五感を合わせる。人は忘れていたのかもしれない。『よう、見えたか?』「ああ」研ぎ澄ませ五感。そして引き出せ辿り付け第六感。一点の流れから見付け出せ。見ろ。心身に刻め。一点の流れから。辿り付く感…

140文字小説「謝罪の行方」

謝って欲しい人間がもうこの世に居ないのと、謝りたい人間がもうこの世に居ないのと、どっちが幸せなのかな?「幸せ?」彼は聞き返した。「僕はどちらにも幸せがあって不幸があると思うよ」彼が答える。「だって君の想いを伝えられないのだから。幸せでも不…

140文字小説「君に会いたい」

誰に会いたくなるんだろう。「会いたくなるんだろう」夜空を見上げて俺は、凍える唇も忘れて言葉を音にするんだ。君に会いたい。素直に言う事も出来ない。意地を張ったって良い事など何も無い。「動くか」

140文字小説「人間の様」

『通じ合えたなら対等』『解り合えたなら友』『愛し合えたなら家族』『そのような生きものじゃなかったのか?なあ人間』神の様な長寿な妖怪が言う。『この様は何だ?』21世紀中盤現在。欲望に勝てない人間。「側に居てくれ」モニターのニュースを見ながら……