140文字小説

日々Twitterで綴っている、実話も含むときもある創作小説ブログです。

怪談

「俺、幽霊だけど幽霊の彼女が怖いんだ…」

『いい?私が化けて出てあげるから、よく見てるのよ?』『そそそ、それだけはやめてくれ!』彼女の化けて出方は尋常じゃない!怖いなんてもんじゃ…。『なによ』この前も屈強そうな男性が一瞬で泡を吹き気絶したくらいだ。実は俺も逃げ出したかった。『俺が化…

「俺、幽霊だけど幽霊の彼女が怖いんだ…」

俺は、彼女が…怖い!俺と彼女は既に死んでいる。『納得出来なぁ~い~』彼女が言う。『いや、その』俺は言葉に詰まる。『あなた、何年、幽霊やってるの?』『そこまで言わなくても』情け無い。『幽霊が化けて出るのは、お勤めでしょ?それが怖くて出来ないな…

「暗闇に浮かぶ白い花」

暗闇に浮かぶ白い花。それは静かに燃える火の玉のようで。白い炎を燃やす。只、風に流され何処かに行く。着いて行こうか。住宅街を過ぎ、鳥居を潜った。『どこだ、此処は?』俺は辺りを見廻す。いつの間にか人が増え。『そうか…』と、口にする頃には自分が死…

「闇に浮かぶ白い花」

暗闇に白い花が浮かぶ。「蓮の花のよう…」恐怖も感じず。私は手を伸ばそうとして躊躇した。花びらが炎のように揺れている。私の気配を察したのか、浮かぶ花は道を示すかのように移動し始める。フラフラと着いて行く。と、「あなた!死人じゃないでしょ」誰か…

「骸から生まれた火」

骸から生まれた火。どこへ行くんだ?一人で歩き出した。足はあるようだ。ボウボウと燃える足は向かい風に煽られて後ろに尾を伸ばす。その内に手が生えた。大きく両腕を振り歩いて行く。今度は坂道を行くのか?上を見上げている、それは頭のようだ。ひとがた…

「スマホに移動?佐藤さん鈴木さん田中さん」

『鈴木さん!』『おや?どうしました田中さん』『いやね、ガラケーが無くなりそうなんですよ』『そう言われれば、二つ折りを持つ人が少ないと思った』『今晩は』『佐藤さん』『どうです?皆さんでスマホと呼ばれる携帯電話に移動しては』『え?』化けて出方…

「私で良いの?」

電車で見掛けるあの子に恋をしたんだ。おっ!今日はやたらと目が合う。車両の中だというのににやけてしまう。えっ?あの子が近付いて来る?『あの……私のこと毎日見えてるみたいだけど』話し掛けて来た!『顔が赤いよ?私で良いの?』「お、俺!」『私、幽霊…

140文字小説「儚い者」

儚い夢を見たんだ。君が陽炎のように揺れる。僕は手を伸ばすことを躊躇う。「何を泣いているの?」休日の夕方。寛ぐ部屋の中。彼女は優しく僕の涙を拭おうとしてくれるけれど…。「幽霊の涙は拭けないんだね」彼女が微笑みを作る。僕は両腕で彼女を抱き締める…

140文字小説「呪いのRed-ray」

「呪いのDVDのなんてもう古いの!今は呪いのRed-rayの時代よ!」「Blu-rayと掛けた駄洒落?」「違うよ!赤いディスクもお洒落だけど、これは何とオプション付き!」「え?」「だから、オプション付き!」「動画に映った霊が飛び出るオプション付き!」イヤァ…

140文字小説「姉弟の肝試し」

「姉ちゃん、いい場所見付けたんだ!病院の廃墟…」「夏彦!またぁ?」「いいじゃないか!俺、姉ちゃんに勝った事無いんだからさ~」「逃げ出す癖に…」「男として勝つまでやる!」「で?今夜?」「お、おう!」私達は今日も肝試しに行く。弟、24歳独身。姉…

140文字小説「氷付けの幽霊」

『あの~』雪道を歩いていた。久々の都会の大雪。大声で呼び止められる。横を見ると、『油断してたら氷ってしまって……』電信柱の横で氷の中に男が居る。「氷付けで何故、喋れるんだ!」つい、パニックから言葉が出た。『幽霊ですから』取り敢えず、氷を溶か…

140文字小説「あの女の微笑」

俺は死んだ。何がいけなかったのか…。運命が狂い出したのは四月。あの女か…。好みじゃないんだ。「貴男の事が嫌いよ」社内で擦れ違う度に言う女。「私が好きなのは貴男の彼女」その日の晩。俺は彼女に刺された。「死んでよ!浮気者!」女の微笑が浮かぶ。

140文字小説「雪女たち」

一冬しか生きられない雪女と季節を永遠に越え生きる雪女。出逢ってしまった。無垢な生を行き命を一冬で散らす。羨ましいと永遠の雪女が言う。『私は出逢いがある度に汚れる。無垢では居られない』ぽろぽろと雪の結晶の涙を流し。『私が貴女を無垢にしてから…

140文字小説「戻れない進化」

『お前達の進化は一歩通行。戻れないんだよ、人間』妖怪に言われた。俺は質問をしてみた。「なら、妖怪は戻れるのか?」『そうさね、我ら妖怪は為すがまま、思うがままさね』「便利なものだな」ニヤリと笑う妖怪の口元。『なあ、人間。回り諄い』俺の心を見…

140文字小説「神への復讐」

荒ぶる神の贄は君。俺は傍観者。助ける義理は…有るが。荒ぶる神の贄は弟。俺は視線を逸らす。肉親という身を引き千切られる。荒ぶる神の贄は…。俺は時が来たことを悟る。此の時とばかりに狂い人を演じ、神も神の住処も人さえも焼き払う。残るは、俺の肉体と…

140文字小説「女妖怪取っ組み合い」

「俺はなぁ…お前らの様を見届けなきゃいけねぇ…なぁ」「誰が決めた訳でもねぇ、俺が決めた」女の妖怪が掴み合いの取っ組み合い。殺し合いをしている。俺は止めること無く、只、見る。これは奴らの理なんだ。「どんな無様な様も、見届けてやるからよ」場が答…

140文字小説「言葉と小さな妖怪」

『言霊……』『言葉、食べる』『食べる』『言葉が欲しい』『欲しい』『食べる』『……』毛玉のような手の平に乗る妖怪。俺の右肩で喧しい。放って置くと静かになった。と、思ったら泣き出した。「しょうがねぇなぁ……」此奴の為に俺は、ぽつりぽつりと言葉を口に…

140文字小説「地獄で骨を拾って」

『そこの骨、拾って』通りすがりの亡者に言う。意識が有るのか無いのか、私に骨を渡す。此処は地獄。婚約者が乗った飛行機がハイジャックされ…そして…撃ち落とさ…否。墜落した。私は迷わず墜落したとされた海に飛び込んだ。せめて彼の骨を拾う為に。『骨、拾…

140文字小説「爺と女幽霊の恋の話し」

爺と女幽霊の恋話なんて、俺はくだらねぇと思ったんだ。なのに涙が止まらない。子を残し死んだ恋女房。毎日、墓の前で泣いた爺。心中しても男に会えなかった女幽霊、自分達の墓の前で毎日泣いた。時がふたりを結んだそうだ。「くだらねぇ」悪態を付きながら…

140文字小説「言霊師」

『言葉が欲しい、言葉が欲しい…』と、唯々、辛く悲しそうに泣く幽霊。辛いのか、悲しいのか、と、問うても。『言葉が欲しい』俺に出来る事は、師匠が漉いた紙に、「言葉をやるよ」言霊に化ける紙に言葉を書いてやる。それを抱き締める幽霊の笑顔が忘れられな…

140文字小説「野良雪女」

雪が降る。俺の頭上にだけ雪が降る。「天罰じゃない?この前、私とのデート、すっぽかしたからよ」と彼女が言う。「天罰じゃねぇ」俺は…。「お前が拾って来た、野良雪女のせいじゃないか!」「ばれた?懐かれたみたいね」と楽しそうに彼女が言う。「クソッ」

140文字小説「師匠が死んだ日」

『産まれて来たからしょうがない』『生きて居るからしょうがない』「何だよ……それ」俺は泣きながら奴に言う。『人間だからしょうがない』「俺はな……」俺は奴の前では泣ける。生業の為の相棒だから、妖怪だから。と理由をこじつけて置く。俺の師匠が死んだ。

140文字小説「女幽霊に迫る!足音」

コツコツ…、私のヒールの足音が響き。ザクザク…、私が歩く度に後ろから付けて来る足音が増えるような気がする。(どうしよう!)心の中は焦るばかり、走ろう!逃げよう!でも足が竦む。「あの」振り返ると、「失礼ですが、貴女、幽霊ですか?」(バレた)

「幽霊地図屋」

俺は幽霊の為の地図屋をしているのだが…。現在、困っている。何故か、報酬だけが俺の手元に届き、仕事の依頼をするはずのご本人、幽霊が現れない。机の上の札束は数千万はある。「困ったな」俺の呟きに、「貰っときましょうよ」と、声を弾ませ言う助手。さて…

『たっちゃん、ごめんね』

俺は幽霊を見たんだ。雪降る夜、街灯の下で。視線を空に向ける幽霊、否、雪を見ているのか?現在版、雪女なのだろうか。俺は知らん振りして横を通り過ぎようとする。『たっちゃん、ごめんね』その声に思わず見て…。にっこり笑う幽霊は、七歳の時に死んだ母だ…

「同居人はアパートの女幽霊」

俺の部屋には女が居る。人間じゃない。俺が殺したとか……断じてそんなことはない!『ばぁ~』「な、何だよ!」『今日はおばけの日だよ?』10月31日。「おばけの日じゃねぇよ、ハロウィンてんだ」「ほら」かぼちゃのキャンドルに火を灯し。『きれい』