140文字小説

日々Twitterで綴っている、実話も含むときもある創作小説ブログです。

140文字小説「其れこそが運命」

逃れられない。其れこそが運命。逃げても逃げても追い掛けて来る。其れが悪しき者なのか。其れが善き者なのか。だからこその運命。ふと、立ち止まった時に悟る。気付くんだ。”何か”を。逃げろ逃げろ!否、捕まえろ!運命に翻弄される様。全ては貴方次第。

140文字小説「あの女の微笑」

俺は死んだ。何がいけなかったのか…。運命が狂い出したのは四月。あの女か…。好みじゃないんだ。「貴男の事が嫌いよ」社内で擦れ違う度に言う女。「私が好きなのは貴男の彼女」その日の晩。俺は彼女に刺された。「死んでよ!浮気者!」女の微笑が浮かぶ。

140文字小説「死ぬまで生きろ」

「死ぬまで生きろ、とことん生きてやれ」「儂を越えろ」「あっははは」「大声で笑って死ねるのは、お前らのお陰だ」そう言って死んだ祖父は98歳の大往生。皆、祖父の大笑いに釣られて笑ったが……。祖父が息を引き取った後は、皆、大声で泣いた。良いんだよな…

140文字小説「バレンタインデーの思い出」

バレンタインデーで思い出すのは子供の頃。「りおちゃんチョコ頂戴!ホワイトデーにクッキーあげるから。交換しよ?」「うん」チョコをあげた日。ほっぺにチューを貰った。そして現在は私の旦那様。「遙人さん、子供の頃、おませさんだったよね?」「あの頃…

140文字小説「雪女たち」

一冬しか生きられない雪女と季節を永遠に越え生きる雪女。出逢ってしまった。無垢な生を行き命を一冬で散らす。羨ましいと永遠の雪女が言う。『私は出逢いがある度に汚れる。無垢では居られない』ぽろぽろと雪の結晶の涙を流し。『私が貴女を無垢にしてから…

140文字小説「戻れない進化」

『お前達の進化は一歩通行。戻れないんだよ、人間』妖怪に言われた。俺は質問をしてみた。「なら、妖怪は戻れるのか?」『そうさね、我ら妖怪は為すがまま、思うがままさね』「便利なものだな」ニヤリと笑う妖怪の口元。『なあ、人間。回り諄い』俺の心を見…

140文字小説「四季を殺して」

俺は春を殺した。君の笑みが気味悪く芽吹いた生命は死んだ。夏を殺した。死んだ途端に雪を壮大にぶちまけた。君が舞う姿を見る。秋を殺した。君の瞳に炎が宿り。生きるものは狂い、断末魔命に色を着け。冬を殺した。全て吹き荒ぶ風に持って行かれ俺と君が残…

140文字小説「神への復讐」

荒ぶる神の贄は君。俺は傍観者。助ける義理は…有るが。荒ぶる神の贄は弟。俺は視線を逸らす。肉親という身を引き千切られる。荒ぶる神の贄は…。俺は時が来たことを悟る。此の時とばかりに狂い人を演じ、神も神の住処も人さえも焼き払う。残るは、俺の肉体と…

140文字小説「融合PCの注文」

SF

「融合PCの注文が来たんだが…」「何か問題でも?」「今回は半化石の琥珀を材料にとの依頼なんだが、故人が所有していたものを使ってくれ。て、ことなんだよな」「う~ん。俺の眼は鉱物専門だし…。今回は死人の眼を借りるか?」相棒の妖怪が言う。「行くぞ。…

140文字小説「死の自覚」

人間は何時か死ぬ。何時か死ぬことを自覚出来ない人間は怖い。鏡を見てご覧?そこには何が映って居る?肉体の姿を視て。その奥に潜む神経を視て。更に心を視て。「何が見えた?」自覚が無ければ自分の姿は視えないよ?何時か死ぬことを知らない人間は怖い。

140文字小説「女妖怪取っ組み合い」

「俺はなぁ…お前らの様を見届けなきゃいけねぇ…なぁ」「誰が決めた訳でもねぇ、俺が決めた」女の妖怪が掴み合いの取っ組み合い。殺し合いをしている。俺は止めること無く、只、見る。これは奴らの理なんだ。「どんな無様な様も、見届けてやるからよ」場が答…

140文字小説「絶縁の詩」

絶縁の詩を詠う。少年が詠う。枯れた心を抱えて。少女が詠う。悲しみに貫かれて。青年が詠う。勇気を手放して。娘が詠う。裏切りに震えて。老婆が打つ手、詩を詠う。この絶縁の全ての心を手に乗せて。女が詠う。断ち切る詩を。依頼主のひとつの縁切りが織り…

140文字小説「幸福と不幸」

幸福が存在する。不幸が存在する。皆、我も我も。「幸福」「不幸」四苦八苦する。誰かが声を掛ける。労りの言葉も、促す言葉も。その言葉の諸々が掻き消えて行く。必死に掴んだそれ。それは誰の為?「幸福」「不幸」誰のもの?誰の為のもの?心に聴く事は出…

140文字小説「一人じゃない」

「何故、人を意識するんだ?」「人は一人じゃないからさ」さり気なく友が言う。「君の作品も人柄も人とは違う。その存在感。君以外の人には有り得ないよ」「ははっ、褒め言葉として貰っておくよ」切なそうに目を細める友の顔。「飲み明かそう!」人は一人じ…

140文字小説「言葉と小さな妖怪」

『言霊……』『言葉、食べる』『食べる』『言葉が欲しい』『欲しい』『食べる』『……』毛玉のような手の平に乗る妖怪。俺の右肩で喧しい。放って置くと静かになった。と、思ったら泣き出した。「しょうがねぇなぁ……」此奴の為に俺は、ぽつりぽつりと言葉を口に…

140文字小説「人類滅亡スケジュール」

SF

”人類滅亡スケジュール”が神様から届いたぁ!「ええ~」ブーイングする人類!『ええ~』ブーイングに反応する神様!『この人類だけが滅亡するように綿密に繊細に立てた、この素晴らしいスケジュールの何が気に入らないか言ってみなさい!』と、神様に言われ…

140文字小説「一点の流れから」

一点の流れを見詰めたのなら見えた筈。一点の流れに五感を合わせる。人は忘れていたのかもしれない。『よう、見えたか?』「ああ」研ぎ澄ませ五感。そして引き出せ辿り付け第六感。一点の流れから見付け出せ。見ろ。心身に刻め。一点の流れから。辿り付く感…

140文字小説「親父ギャグと病気」

親父ギャグを連発しないと死んでしまう病気に掛かってしまった!「何言ってんの?馬鹿?」彼女が言うのもごもっともだ!「だがな…人事部の加藤さんはネタ切れでこの前、救急車で運ばれてだな…」「はぁ?」「時間だ!ギャグが滑らなかったら…俺の骨は拾ってく…

140文字小説「謝罪の行方」

謝って欲しい人間がもうこの世に居ないのと、謝りたい人間がもうこの世に居ないのと、どっちが幸せなのかな?「幸せ?」彼は聞き返した。「僕はどちらにも幸せがあって不幸があると思うよ」彼が答える。「だって君の想いを伝えられないのだから。幸せでも不…

140文字小説「地獄で骨を拾って」

『そこの骨、拾って』通りすがりの亡者に言う。意識が有るのか無いのか、私に骨を渡す。此処は地獄。婚約者が乗った飛行機がハイジャックされ…そして…撃ち落とさ…否。墜落した。私は迷わず墜落したとされた海に飛び込んだ。せめて彼の骨を拾う為に。『骨、拾…

140文字小説「宇宙のペンダント」

宇宙を詰め込んだんだ。ペンダントに。「君に見せたかったんだ」君の瞳に映した宇宙。この暖かさも伝えたかったんだ。「きれいね」君は目を輝かせてくれたね。その瞳に映った宇宙を僕も見て…。「そうだね」と答えた。新しい年。喜びをふたりで手に入れたんだ…

140文字小説「給料UP!」

おかん「大赤字なのに景気良く社員(身内)の給料とボーナス、UPしたんだって?」政府「だい~じょう~ぶ~」おかん「ちゃんとお客様(国民)へのサービスは行き届いているんでしょうね?」政府「えへへっ」おかん「この子は…」政府「お尻出す?」政府「痛い…

140文字小説「爺と女幽霊の恋の話し」

爺と女幽霊の恋話なんて、俺はくだらねぇと思ったんだ。なのに涙が止まらない。子を残し死んだ恋女房。毎日、墓の前で泣いた爺。心中しても男に会えなかった女幽霊、自分達の墓の前で毎日泣いた。時がふたりを結んだそうだ。「くだらねぇ」悪態を付きながら…

140文字小説「君に会いたい」

誰に会いたくなるんだろう。「会いたくなるんだろう」夜空を見上げて俺は、凍える唇も忘れて言葉を音にするんだ。君に会いたい。素直に言う事も出来ない。意地を張ったって良い事など何も無い。「動くか」

140文字小説「野良雪女」

雪が降る。俺の頭上にだけ雪が降る。「天罰じゃない?この前、私とのデート、すっぽかしたからよ」と彼女が言う。「天罰じゃねぇ」俺は…。「お前が拾って来た、野良雪女のせいじゃないか!」「ばれた?懐かれたみたいね」と楽しそうに彼女が言う。「クソッ」

140文字小説「言霊師」

『言葉が欲しい、言葉が欲しい…』と、唯々、辛く悲しそうに泣く幽霊。辛いのか、悲しいのか、と、問うても。『言葉が欲しい』俺に出来る事は、師匠が漉いた紙に、「言葉をやるよ」言霊に化ける紙に言葉を書いてやる。それを抱き締める幽霊の笑顔が忘れられな…

140文字小説「人間の様」

『通じ合えたなら対等』『解り合えたなら友』『愛し合えたなら家族』『そのような生きものじゃなかったのか?なあ人間』神の様な長寿な妖怪が言う。『この様は何だ?』21世紀中盤現在。欲望に勝てない人間。「側に居てくれ」モニターのニュースを見ながら……

140文字小説「師匠が死んだ日」

『産まれて来たからしょうがない』『生きて居るからしょうがない』「何だよ……それ」俺は泣きながら奴に言う。『人間だからしょうがない』「俺はな……」俺は奴の前では泣ける。生業の為の相棒だから、妖怪だから。と理由をこじつけて置く。俺の師匠が死んだ。

140文字小説「女幽霊に迫る!足音」

コツコツ…、私のヒールの足音が響き。ザクザク…、私が歩く度に後ろから付けて来る足音が増えるような気がする。(どうしよう!)心の中は焦るばかり、走ろう!逃げよう!でも足が竦む。「あの」振り返ると、「失礼ですが、貴女、幽霊ですか?」(バレた)

『たっちゃん、ごめんね』

俺は幽霊を見たんだ。雪降る夜、街灯の下で。視線を空に向ける幽霊、否、雪を見ているのか?現在版、雪女なのだろうか。俺は知らん振りして横を通り過ぎようとする。『たっちゃん、ごめんね』その声に思わず見て…。にっこり笑う幽霊は、七歳の時に死んだ母だ…